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桜桃百首 autau hyakushu 制作 1996 年 8 月 この夏、桜桃の歌あまた出で来れば。 いますこしわすれてゐたきことふたつ桜桃みづにしづみて浮きぬ 桜桃が産むふたりごは桃次郎桜太郎ぞ頬ひかる武者 さくらんぼほどなこど...
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日毎の梅 [梅百首] 1997 年 2 月 17 日~ 2 月 25 日 Feb.17 梅の花見開きにけり みづからの蕊のひかりの まばゆかるべし ほつほつと莟ほぐれつ 如月のひかりのなかの たしかな翳り 梅の花 その咲くときも散るときも なべてしじま...
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百の食卓 les cent tables † † † 1998.6.1. 朝 朝といへば海のものこそ恋しけれ鮭の切り身の東雲ふたつ 澄みとほることあるまじき味噌汁のこの混沌を拝みまつる 拝み=を...
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[我百首] わたくし双紙 1997.10.3 ~ 10.25 制作 1997.10.3 ふりかへることはかつてのわが肩にあたたかき湯をそそぎやること くらき日のわれ目をあげよこのわれがおまへのそばにたちてをるゆゑ かのときは思ひ出されるたびごとにくるまれと...
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空百首 ● sora hyakushu 1998.7.4. 朝 わが裡に漏斗のごときものありて空をあつめて渦になしたり 漏斗=じやうご おほぞらのもとに生まれておほぞらのもとにめざめてわれはそらならず あけがたに視しゆめはこれぐいぐいとひろがつてゆくにご...
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桜手帖 [ sakura note ] 近くにある桜並木のデッサン 1997 年 3 月 17 日~ 4 月 17 日 3月17日 昨年たしかに桜の咲いた並木の木末が、蕾もないのに目立ちはじめる。 花どきをいま待...
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雨後の窓 [雨百首] 1997年6月15日 うちよする雲のなぎさのしぶきかも額にかかるこの雨かろし 松の葉のにほへる針のつかのまの雨とことはにあたらしくふれ 白絹の雨の練り糸国境に沿ひてを行かな天路なすまで 国境=くなざ...
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酒百首 [ sake hyakushu ] 1997 年 5 月 22 日~ 5 月 26 日 *引用句はすべて久保田万太郎 遠近の灯りそめたるビールかな とつぷりと暮れたる町も汝が胸もいづれ麦酒の落ちゆくと...
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ブログの移転にともなう荷造りと荷解きを好機と捉えて旧ブログ 「音信」 以前の記事から収納を始めます。 まず1996年開設のホームページ「縞馬家集」百首シリーズを順々に。 なにぶんいにしえのむかしのこと。 当時の体裁の復元は無理でした。 テキスト内容への加筆は あきらかな誤記の訂正...
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海の柩 「生きていたことがないから死んだこともない」と言った皇帝。あれはだれだったろう。かの国で女のひとたちは長いことずいぶんな目に遭ってきたけれども、彼女たちはこの皇帝と同じことばを、その背景はまったく異なるにせよ、数知れず呟いたにちがいない。 話はべ...