縞馬家集の棚 都々逸
都々都逸
dodoitsu
【都々逸】 俗曲の一種。 歌詞は七・七・七・五の 四句二十六音からなる。
知やまひだれこそ知の住みかなれ
あんな男にほれたはなぜかわからなくても困りやせぬ 人に言へない恋ではないよ言へるほどではない恋だ これはふたりの内緒の恋と口ぢやいへないことをする 恋に恋してゐるうちが花人に恋すりや実ができる
情
青い心が熟しきるまで
うそもいへないほんともいへぬおまえがすきとしかいへぬ ほんのひとりにほれたが最後ほかのぜんぶを放りだす さめたお湯からあがれぬやうにさめた恋からぬけ出せぬ 「あんな女がどうしていいの」「おまへに似てるとこがいい」
意
憶ふ心のひとつを捨てて
君が盗んだわたしの一夜君を盗んでとりもどす 早くあなたにあへますやうに“あなた絶ち”して願かける なんといつてもあなたのよさはわたしに惚れる風変はり 死んでみせてもいいけどきみがちやんと見てるか気にかかる
雪雪につけたや草の冠
雪がつもれば思ひもつもるきみの足跡待つほどに あれは雪かときかれて雪と言ふをまたずに雨となる 風の花だといつてたくせにつもりはじめりやいやな顔
月月のうさぎはふとりじし
月のうさぎは女ださうな春夏秋冬餅を食ふ
月のうさぎは男ださうな春夏秋冬杵を持つ 吠えるはずだよ狼男月にうさぎがゐて踊る
花花にもうそとほんたうがある うそぢやなかつたほんとの恋の花の証拠にすぐ散つた やはり奉行だどこかが野暮だ散らぬ桜があるものか 花も蕾も冠とればおよそ可愛くないやつら
松人をまつの木根が生へる
松の落ち葉が人とふ文字にみえてくるまで人を待つ 人を待つとは真夏の真昼灼けて焦がれる影法師 いつが人生の真夏で真昼だれが太陽だつたやら
竹「思ひのたけ」といふいいことば
しなひしなはせ思ひのたけの竹の林が風に鳴る 水にながしたむかしの恋がありつたけ降る今日の雹 しめじ松茸舞茸えのき怖いきのこは首つたけ
梅古典しばり
なんとおつしやるうさぎのあなたかめのわたしと走るとは 人をなんだとお思ひなのか「産めよ増やせよ地に満てよ」 ながい話をつづめていへば光源氏が生きて死ぬ
──都々逸 了── ©1996-1998 KOIKE Sumiyo